ケータイ小説 野いちご

恋をしたのは

高校一年生
初夏、近づいて

「海音ちゃん、今日も練習?」

 帰り支度をする私の元に由衣ちゃんと凜ちゃんがやってきた。
 二人は入学して二日目、私が話してみたいな~と思っていたあの子たちだ。
 毎日少しずつ少しずつお話できるようになって、今は一緒にお弁当食べたり。休憩時間には集まっておしゃべりしたりできるまでになれた。
 慣れたら案外おしゃべりな由衣ちゃんとしっかり者の凜ちゃん。
 可愛らしい二人のことが大好きになった。

「そうなの、今日も練習なんだ」
「そっか、残念。なら今度一緒に行こうね、これ」

 凜ちゃんが手にしていたものは駅前に出来たという数種類のチーズケーキとジュースバーのお店のチラシ。

「ううう、これ! 行きたかったやつ! 二人とも行ってくるの?」

 恨めしそうに二人を見上げると。

「これから行ってくるよ。海音ちゃんの分も食べてくるね」

 からかうように笑う由衣ちゃん。
 そんなあ、と眉尻を下げる私に。

「また今度一緒に行こうね、海音ちゃんが暇になるの待ってるからね」

 凜ちゃんの言葉に心の底からうんうん頷いてると。

「行くよ、片山さん」

 隣からかかる声に、時間がないのを思い出した。

「じゃ、じゃあまたね、また明日っ!!」

 二人に手を振り加瀬くんと連れ立って歩き出す。
 HRを終えてすぐ帰り支度をしないとバスに一本乗り遅れて結果30分練習時間が減っちゃうことになるのだ。

 一度忘れ物をして取りに戻りバス一本遅れたら、周にめちゃくちゃ怒られた。
 やる気ねえのか、ってまくし立てられて涙目になった私に。
『オレが今度から責任持って片山さん回収するから、な?』
 もう言うな、と私を庇ってくれた加瀬くんに本当感謝したんだ。

 加瀬くんのためにも二度とやらないぞ、って誓ったのに。
 ……やっちゃった、しかも一番大事な物。


「どうしよう……」
「うん?」
「加瀬くん、私ね、ステイック机に入れたまんまみたい」

 今日は荷物が多かったのでいつもはカバンに入れっぱなしにしていたスティックも含めて一度机の中に入れてしまったのを昇降口で思い出す。

「先、行ってて、次ので行くから!!」
「片山さんっ、」
 
 背中からかかる加瀬くんの言葉に振り返らずに教室へと走り戻る。
 途中でまた由衣ちゃんと凜ちゃんに会って、苦笑しバイバイとあいさつを交わしてから。
 机にステッィクがあるのにホッとして、はああああっと大きなため息をつく。
 これを忘れて行ったら周にもっと怒られそうだもん。
 
 次のバスの時間に間に合わせるようにゆっくりと学校を出て、そして。

「え? 何で?!」

 周たちと先に行ったはずの加瀬くんがバス停にいるのに驚いた。

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