──額に温もりを感じ、うっすら目を開ける。

すると……。



「兄さ……⁉ なんで⁉ 今月忙しいんじゃ……」

「大事な弟が1人で苦しんでるのを放っておけるか! 俺、医者の卵だぞ!」



枕元で笑う兄の姿に驚く。

あぁ、先生が連絡しちゃったのかな。



「ごめんな。苦しんでるのに全然気づかなくて」

「ううん。俺のほうこそ、忙しいのに時間取っちゃってごめん」



頭を撫でる手が温かい。

……人の温もりに触れたの、久しぶりな気がする。



「そうだ、子守唄歌ってあげるよ」

「いいよ。もう子どもじゃないんだし……」

「いいから! こういう時くらい甘えな!」



恥ずかしいと思いながらも、嬉しくなって目を瞑った。



「眠れ~♪ 愛しい~しおん~♪」



……あれ? なんか下手じゃね?
こんなに音痴だったっけ。



「愛してるよ~♪ マイ……ベストフレ~ンド♪」



ベストフレンド……?
こんな歌だったっけ?

あぁ……兄さんには悪いけど、音痴すぎて全然眠れない。



「僕の歌で~君を~癒してあげるよぉ~♪」



全然癒されない……。
うっ……ダメだ、なんか頭がガンガンしてきた。



「あの月が~僕らを見守っているぅ~」



やめて兄さん……もうやめて……。



「同じ星のなか~ま~♪」

「…………やめて!」