季節は春。
桜が散って、陽射しが暖かさを帯びてきた頃。

布団にくるまれながら小鳥のさえずりを耳にした。


ん……もう朝……?


うっすら目を開けて、視線を窓のほうへ。

カーテンから漏れる太陽の光を浴び、腕を伸ばして枕元に置いたスマホを手に取る。


6時前か。起きるにはまだちょっと早い。
……あと1時間だけ寝ようっと。



「────もー! なんで起こしてくれなかったの⁉」

「何回も呼びました」

「8時になっても起きなかったら起こしに来てよ!」



キッチンにいる母に言い放ち、立ったまま食パンを頬張る。


私、北松明莉は、今日から高校2年生。

新学期初日、二度寝により1時間遅れて起床し、今、バタバタしながら朝食を取っている。


反応がなかったんなら起こしに来てよー!

……まぁ、アラームに気づかなかった私が悪いんだけどさ。


食パンを口に詰め込み、制服のボタンを留めながらリビングを後にすると。



「いってきまーす」



スーツを着た父と鉢合わせた。



「まっ、待ってパパ! が、学校まで送って!」

「ええっ? まだ全然準備できてないじゃん」

「今から急いでするから! もうちょっとだけ待って!」

「明莉! 寝坊した自分が悪いんだから自分で行きなさい!」