☆心美side☆


「綺月君の夕ご飯、いらなかったかな?」

 
 リビングの壁時計が、
 ちょうど夜の7時を指した。


 先に、夕ご飯を済ませた私。

 綺月君のために用意した料理を、
 冷蔵庫に移すか悩み中。



 きっと、黒塗りの車の人と、
 夕飯を食べているよね?


 そう思って、サバの味噌煮に
 ラップをかけようとした時。


「ただいま」


 低くて不愛想な声が、私の耳に。



 リビングに入ってきた、制服姿の綺月君。


 高1から、見慣れているはずなのに。
 
 我が家のリビングにいる姿が
 見慣れてないせいか、
 心臓が、少しだけ早く跳ねだす。




「綺月君。夕ご飯、食べる?」


「……ああ」


「食べ終わったら、
 食器はそのまま置いといてくれればいいよ。
 後で、洗っておくから」