☆綺月side☆
マジかよ。
こんな場面で、CMに入んなよ。
俺の視線の先には、
明らかに泣いている心美の背中。
後ろ姿しか見えないが、
ヒックヒックと肩が小刻みに震えている。
――抱きしめてやりてぇ。
無意識に浮かんだ心の声。
追い払うように、
俺は、手のひらで頭を抱え込んだ。
心美が振り向いて、
俺に話しかけて来たらどうしよう。
そんなドキドキに襲われている間に、
CMがあけたけれど。
吸血鬼の、絶体絶命状態は続いていて
心美の肩は、
CM前より、震えが増している。
このアニメなんて、
本当は興味すらない。
吸血鬼は、えぐい殺され方をするし。
人間の心の膿っていうか、
どす黒い部分を、容赦なく露わにしてくる。
そこが、
俺の心の醜さと重なることもあって。
目をそむけたくなる時も多々。
でも、心美が好きなアニメだから
ある仕事を引き受ける代わりに、
DVDを全巻、揃えてもらった。
俺が心を許している、
親友兼、兄貴代わりの二人に。