☆心美side☆


 きっと私なんて

 綺月(きづき)君の瞳に
 映ったことさえないんだろうな……



 教室に差し込むオレンジ色の夕日。

 ステージを照らすライトみたい。

 一人の男の子に注がれている。



 注がれているのは、夕日だけじゃない。

 声をかけるタイミングを伺う、
 女の子たちの視線も。

 教室のあちこちから。



「綺月君、今からカラオケ行かない?」

「他の男子も行くから、一緒に。ねっ」



 モテメイク。

 胸キュンスマイル。


 男を落とすテクをふんだんに使った、
 小悪魔的な表情ですり寄る、女の子達。


 読モ並みの美女たちの誘いなのに

 綺月君の心には響かないみたい。


「俺、女と遊ぶ気ねぇから」


 声かけんな!って迷惑顔で、
 あっさり跳ねのけた。