* * *


「あれ? 律くんは? 一緒に帰るんでしょう?」


「うん! もうすぐ来ると思うよ!」


私は進路面談中の律くんを下駄箱で待っていた。

今日はバイトがないらしく、玲来ちゃんと矢坂くんは一緒に帰るみたいだ。


「てか、芽衣! あんたまだ懲りずにリップなんてつけたの!?」


「うっ……」


まるでお母さんみたいな口調だ……。


「西宮西宮っ、はみ出てんぞ……」


ここ、と自分の唇を指さした矢坂くんにまで指摘されてしまった。

慣れないことはするもんじゃないって言うけれど、本当にそうなのかもしれない。


「芽衣の気持ちもわからないでもないけどさ。芽衣にはそんな赤いリップより──」


「君、それは校則違反ではないか?」


え……っ?