セミがうるさいくらいに鳴き、ジリジリと太陽が照りつける真夏のこと。入道雲の下、一人の女学生が急ぎ足で自宅へと向かっていた。

「急いで洗濯物を取り込まなくちゃ!夕立が来るかもしれないし……」

そう言いながら汗を拭う少女の名前は未夏(みなつ)。長い髪を三つ編みにし、パタパタと手で火照った体を扇いでいる。もしも令和という時代に生まれていたら、彼女はもっと幸せだったかもしれない。

「新聞を読んだか?大日本帝国様はあのアメリカやイギリスの軍隊を破ったそうだぞ」

「天皇様万歳!憎きアメリカを倒し、世界を我が国のものに……!」

家の近くで近所に住んでいる人たちが話している。そう、今は第二次世界大戦の真っ只中。国民は勝つために命を捧げ、世界中で銃声が飛び交った時代だ。

「戦争なんて……」

憎い、そう言いかけて未夏は口を閉ざす。戦争に反対すれば逮捕され、罰せられてしまう。そんなことあってはならない。