ここのところ、ひっきりなしに電話が鳴り続けている。

青木先輩が産休に入ってから三週間。二人体制でやってきたものを、一人で賄わなければならなくなってしまった。

もちろん青木先輩は一人でこの業務を回していたらしいし、できないはずがない。そうなのだけれど、それにしても異様なくらいにタスクがかさんできている。


「はい、佐藤です」

『佐藤さん、橘専務の再来週の予定を調整してほしいんですが』

「再来週ですね……。お待ちください」


すこし前まで開いていたシートを閉じて、スケジュールカレンダーを開く。

私がここまで忙しいなら、橘専務が忙しいのは必然だ。

お昼の時間以外のすべてが、びっしりと予定で埋まってしまっている。

夜も会合や会食でいっぱいだ。こんなにも忙しければ、交際相手を構っている暇もなかっただろう。

最近の私は専務が夜の会合に出ている間にどうにかタスクをやりこめている。

会合が終わる一時間前に切り上げて、急いで自宅に帰ってから、ご飯を食べてお風呂まで済ませてしまう。

かなりハードなスケジュールだけれど、遼雅さんの帰宅は私が予想するよりも2時間から3時間くらい遅くなることが多い。