生活感がある、コンクリートの部屋。


ほんのりと香るのは、コーヒーの良い香り。



「起きた?朝ごはんができたよ」



湯気の立つ、一人用の土鍋が乗ったトレイを抱えるのは、昨日まで関係も何も無かった人。


ただ、私が体調不良で倒れ、彼の家に連れ込まれた、と言うだけの関係。



「食べれそう?」


「...うん」


「よかった。
食べやすいと思って、うどんにしたよ」



食べさせてあげるね、と、枕元のテーブルにトレイを置く。


昨日、わかったことがある。


彼は、かなりの変人だ。


目の前で倒れただけの見ず知らずの女を家に連れ込むあたりもそうだが、それより、言葉である。


まるで前から知り合いだったかのように話す。


...もちろん、内容ではなく、口調の話だ。