再び弦さんと眠りに就き、目が覚めると隣に彼の姿はなかった。

 飛び起きて時間を確認すると七時半を回っていた。

「嘘、もうこんな時間?」

 ベッドから降りて廊下に出るとシンとしていて、人の気配がない。弦さんはもう仕事に出たのだろうか。

 リビングに入ると、おいしそうな匂いが鼻を掠める。それもそのはず、テーブルの上には弦さんが作ってくれた朝食が並べられていた。それと綺麗な字で書かれた手紙も。

【よく寝ていたから起こさずに行く。今夜は遅くなるから待たなくていい】

 用件のみが書かれた短い手紙を何度も読み返す。そして次にリビングに目を向けた。

 結婚を機に弦さんが購入したのは、都内の超高層マンションの最上階の部屋。四LDKの広々とした間取りで、ふたりの寝室の他にそれぞれの個室もある。

 家具や家電など、すべて私の希望を取り入れてくれた。最初は申し訳なくて、どんなものでもいいと言ったのに、「そういうわけにはいかない」と弦さんはなかなか引き下がらず。
 ひとつひとつふたりで選んで買い揃えていった。いや、家具や家電だけではない。

 忙しい仕事の合間を縫って、結婚式の準備も一緒に進めてくれた。多くの招待客の中には、弦さんの親族や大事な取引先もいて不安だったけれど、彼のおかげで結婚式は滞りなく進み、私にとっても思い出に残る素敵な結婚式にすることができた。

 歩を進め、向かう先はリビングの棚に飾られている結婚式の写真。