季節は冬から春へと移ろいゆく頃。青空が広がる快晴の日。私は久しぶりに美香とランチをともにしていた。

 やって来たのはパスタがおいしいと有名なカフェ。ゆったりとしたソファ席に座っていると、美香はすっかり大きくなった私のお腹をまじまじと眺めながら言った。

「うわぁ、ずいぶんとお腹大きくなったね」

「もう臨月だからね」

 お腹の中の赤ちゃんは順調に成長している。性別は女の子だと知らされた。一緒に聞いた弦さんはとても喜んでいた。

 私としてはお父さんじゃないけど、サイレンジの跡取りとなる男の子じゃなくて申し訳なかった。

 でも弦さんは「元気に生まれてきてくれるなら、男の子でも女の子でもいい。それにこれからの時代、なにがなんでも会社を男が継ぐことはない。女社長もまたいい」と言ってくれたんだ。

「ねぇ、どんな感じなの? お腹の中に赤ちゃんがいるって。胎動も感じて、他にも身体に色々な変化が生じるんでしょ?」

 興味津々で聞いてきた美香にクスリと笑みが零れる。