弦さんと想いが通じ合い、そして妊娠のことを伝えてから一ヵ月。

「んっ……」

 目が覚めると隣に弦さんの姿がない。ゆっくりと起き上がって時間を確認すると、六時半を回っていた。

 昨夜、たしかに六時にアラームが鳴るように時計をセットしたはず。それなのに鳴らなかったということは、また弦さんにやられたということだ。

「もう弦さんってば、また勝手に……」

 なんて言いながら、彼の優しさが嬉しくて頬が緩む。

 弦さんは妊娠した私を必要以上に心配する。朝も起きなくていいと言われ、朝食の準備までしてくれる。

 だけど仕事をしている彼にやらせるのが忍びなくて、いつもと同じ時間に起きて朝食を作り続けていたら、弦さんは強硬手段に出たんだ。

 今のように時計のアラームを勝手に解除して、私を起こさないように彼が早く起きる。そして私が起きる頃には、朝食の準備が終わっているんだ。

 起き上がって寝室を出ると、廊下にはおいしそうな匂いが漂っている。珈琲の芳しい香りも。