3話「繋ぐ過去」


 
 一目見てすぐにわかった。
 その者が、人ならざる存在だという事が。
 あまりに桜門という人物が、神秘的な雰囲気を出していたからだ。

 銀色の髪は氷のように透明にも見えるし、夜の闇をうけて黒にもなる不思議な色だった。真っ白な着物の裾や袖には、黒の糸で繊細な花が描かれている、とても美しかった。漆黒の帯、そこにはきらびやかな宝石が散りばめられた帯留めが輝いていた。宝石はそれだけではなかった。耳元や首、指や腕、足首など様々な部分にアクセサリーをつけていた。金銀、プラチナ、宝石の種類もバラバラだった。そんなにも沢山の貴金属を身に付けていれば下品に見えそうなものだが、何故かその男はとても上品に身に付けているから不思議だった。
 けれど、1番美しいのは髪でも着物でもアクセサリーでもなかった。
 その容姿が見たこともないような美青年だったのだ。髪と同じ色の長い睫毛切れ長の瞳やシュッとした顎、小さな顔に白く澄んだ肌。中性的な雰囲気だったが、それが男性だとわかるのは細身だが、肩がしっかりとしており、手がゴツゴツとしているのだ。
 こんな綺麗な男の人、存在するのだ。と、文月は惚れ惚れとその男を見つめてしまっていた。
 そんな文月の視線を受け、男は全てわかったようにニッコリと微笑んだ。目の前で容姿端麗な男に微笑まれるというのは、経験もしたことがない。ドキッとしたのと同時に呆然とした状態からやっと覚める事が出来た。


 「あなたは……桜門さんですか?」