休日の午前10時。
 目的地の最寄駅に降り立った私は、男の姿を探す。


「……いた」


 男の姿を見つけた瞬間、思わずため息を吐いてしまう。まさか休日にも彼……霧谷と会うことになるなんて。

 今から1週間ほど前を思い出す。テストが終わり、廊下の掲示板に学年順位が貼り出された。


 過去最高の合計点数を叩き出した私だったけれど、霧谷はさらにその上を行き、やっぱり1位の文字の隣には霧谷の名前が並んでいた。

 毎度毎度、こんなにも勉強した覚えはないというほど頑張っているのに、霧谷はその先をいく。


 負けてしまった私は、約束通り霧谷とデートをする羽目になってしまったのだ。それがまさに今日である。


「あいつ……」


 すでに駅前にいると連絡が入っていたため、その姿を探せばすぐに見つかった。

 改札を出てすぐの柱の前で待っていたのだ。しかも霧谷は、2人組の女の人に声をかけられていた。