ーー俺には、何も無かった。

京極財閥の一人息子として産まれ、逃れられない運命の中に迷い込んでしまったのだと理解するのに、それほど時間はかからなかった。


生後八ヶ月から英才教育は始まり、日々が憂鬱で堪らなかった。

もともと、吸収能力や順応能力はずば抜けて高く、教えられて出来ないことは無かった。

普通の人間が幾時をかけて習得するものも、自身にとっては容易い。


何でも出来て、何でも手に入る。


けれど、欲しいものなんて何も無かった。


つまらなかったんだ、本当に。