ケータイ小説 野いちご

惚れたら最後。

chapter.2
次男坊『雅狼』

SIDE 刹那



俺は気味が悪かった。

なぜか上機嫌で実家に帰ってきて、黒猫のノワールと笑顔で遊んでいる絆が。

何だよあのだらしねぇ顔。若頭『白狼』の面影もない。

死角の壁の隙間からそっとのぞいていたら、洗濯物を持ってせかせかと現われた母さんが絆に声をかけた。



「何かいいことあったの、絆」

「いいや、なんでもない」



なんでもないと言ったものの、口角は上がっていて余計不気味だ。気持ち悪っ。



「母さん、親父って昔からグイグイ来る感じだった?」

「志勇?うん、すごかったよアプローチが。今もだけどね」

「ふぅん」



特に続かない会話に、母さんは首をかしげて数歩歩いたが、すぐ戻ってきた。



「……もしかして、気になる子でもできた?」

「秘密」



うげぇ、あの絆に本気の女?

俺は驚きのあまり、その甘ったるい表情の絆を二度見し、ついに目の前に飛び出した。



「だから女遊びのやめたの?どんな娘?紹介してよ俺に」

「どっから聞いてたんだよこの性悪」

「何言ってんだよ、俺が性格悪いのは今に始まった話じゃねえし」

「チッ」



包み隠さず舌打ちをされたものだから、意地悪く笑って見せた。

昔から兄弟なのに馬が合わず、目の上のたんこぶのような扱いをされているのは分かっている。



「へえ、そうなんだ、ふーん。
父さんには言わないようにしてやるよ。
恋愛に浮かれてるなんて聞いたら怒るだろうから」


仕事、行き詰まってんだろ?と言いたげに首を傾げた。

その仕草に余計に腹を立てた絆は、思いっきりガンを飛ばしてきた。

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