SIDE 絆が


俺は連絡を受け、嬉しくてたまらなかった。

琥珀が頼ってくれた、そして初めて甘えてくれたことに舞い上がりそうな勢いだった。

嬉しすぎて事務所を通る時ニヤついてしまい、組員に3度見くらいされたが、気にならないほど浮かれている。

駐車場に停めてあった白いスポーツカーに乗って30分ほど走らせる、琥珀が住むタワーマンションに着いた。



「お待たせ、ありがとう来てくれて」

「別に?琥珀に甘えられたらすぐ来るに決まってんだろ」

「え、そうなの」



助手席に座った琥珀にからかうように笑いかけたが返事は曖昧。

普段なら照れるか冷静なツッコミが入るところだが反応なし。

……なんかあったな。

察した俺は賭けに出た。



「琥珀、すっげえいい匂いする」

「え?ああ、絆に出会う前にお風呂入ったから。
さっきまで夢の部屋を整理しててさ。
ずっと手をつけてなかったからホコリっぽくて……んっ」



身体をたぐりよせ首筋を甘く噛むと甘美な声が車内に響く。

琥珀はイレギュラーに弱いからちょっとイタズラしたら話してくれると考えたが、すんなり自分から言ってくるとは思わなかった。



なるほど、“夢”絡みか。

琥珀の心の大半を占めている「夢」という女。

彼女は琥珀にとって母であり姉である唯一無二。

出会って数ヶ月の自分では到底敵わない大きな存在。

その部分は一生かかっても奪うことはできない。



ふと、琥珀の大切な人間に嫉妬してしまっている自分がいることに気がついて、苦笑いした。