あたたかなぬくもりに包まれて、何だかとても気持ちいい。
 いつまでも、このままたゆたっていたいと思いながら、ぼんやりしていたら、耳元で優しい声がした。

「ハル、おはよう」

 ……カナ。

 ゆっくりと目を開けると、自宅と違い遮光ではないカーテンは日の光が透け、寝室は薄っすらと柔らかな朝の光に満たされていた。

 二度目の目覚めは、今度こそ朝だった。

「……おはよう」

 ふわあっと小さくあくびをすると、目尻に涙が浮かぶ。

「もう少し寝る?」

 とカナがゆっくり、わたしの頭をなでた。

 ……もう少し?

 後、少しだけ。
 そう。後、少しだけ、カナのぬくもりを感じていたい。

 そう思って、カナの大きな背中に手を回すと、カナは嬉しそうに笑った。

「ハル、大好きだよ。愛してる」

 カナの胸の中に抱きしめられ、そのぬくもりに包まれる。

 わたしも。わたしも、愛してる。

 ……ああ、幸せだ。
 幸せって、こういう事を言うんだろうな。

 自然とそんな気持ちが沸き起こる。
 カナの胸に頬を押し当て、幸せを噛み締めていると眠気に襲われた。

 ……寝ちゃダメ。
 だって、今日は、もし元気だったなら、やりたいことがいっぱいあるんだから。

 だけど、このままだと、一分と経たずに寝てしまう自信がある。
 自然と身体の力が抜けていく。

「もう少し寝よっか。ゆっくりしよう」

 カナに言われて、気力で首を左右に振ると、カナはくすりと笑った。

「じゃあ寝ないで、もう少し、こうしていよっか?」

 カナはわたしを抱きしめて、優しく頬をなでた。
 ぬくもりが心地よくて、本当に心地よくて……。

「……ん」

 そう答えたのに、もう起きようと思っていたのに、わたしはまた眠ってしまい、いつの間にか薬も飲まされていて(何故か全く記憶にない)、次に気が付いた時には、すっかり日は登りきっていた。