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昔から、何度も見る夢がある。あの夢を見ると、私はきまって、温かい気持ちで朝をむかえることができた。

お父さんと、お母さんが病院に運ばれた夜も、二人の死を告げられた夜も、

初めて大好きだったお兄ちゃんに、お腹を思いっきり殴られた夜も……

私を癒したのは、あの夢だった。

大きなグランドピアノのある、古民家のような雰囲気の小さなカフェだった。雪が白く光る、満月の夜。

そこにいたのは、幼い頃の私と、中学生くらいの、黒髪の男の子。

ピアノチェアに座る私は、寒さで震えていた。裸足で、なぜか血まみれな足。

彼は涙を流すと、そっと私を抱き締める。彼に包まれながら、私も涙がこぼれる。

「やっと……やっと会えた…」