風と混ざって聞こえてくる夏の音。
日差しを照りつけたアスファルトが熱い熱気を漂わせている。
どこを見ても陽炎が揺れていて、蝉の声は止むことを知らない。
毎日が晴天で、部屋の窓から見える空に浮かぶ入道雲を見ていた。
昔あった、トラウマのせいで嫌いになった夏の世界。
神崎 優真(かんざき ゆうま)。16歳。自称イケメンの高校1年生である。
まぁ、「嫌い」だとか何とか言っても夏が反応を起こす訳でも無い。
そんな、面白くない僕の夏が今年も始まろうとしていた。
「お兄ちゃん!起きてる?!」
ドン────!と、ドアが破壊されてしまうのではなかろうかと本気で心配してしまうほどの音が耳に届いた。
窓の外から視線を外し、ギョッとして勢いよく後ろを振り返った。
「な、なに…?」
「なに?じゃないよ。さっきからずっと呼んでるのに!」
妹である咲希(さき)の説教を聞き、朝からついてないなと思う。
下へ降りリビングへ行くと、お母さんが座って待っていた。
お父さんはもう行ったのだろう、おれが座った目の前には空になったコップが置いてあった。