【side 桜】

 魔法がかかったみたいだった。

 目の前が、世界が輝き出したような気がした。

 感情の無い白黒に見える俺の世界は、一瞬で色付いた。

 俺の心は綺麗な色の感情が増えた。

 あの日は、屋敷、鈴の屋敷に仕えてる執事だから、買い出しに朝早くに行っていた。

 まだ朝日ものぼらず薄暗い中、結乃とぶつかった。

 こう、なんというか、可愛かったと言えばいいのか、とても綺麗に見えた。

 心がとても綺麗な気がした。

 けれど、そんな事を思っただけで特になにもなかったけれど、次の日には、ソイツの事が頭から離れなくなっていた。