それから梓と厚彦は学校へ戻ってきていた。


すぐに家に帰ってもよかったのだけれど、まだ日が高いし、他にやれることがないか探しに来たのだ。


「まだいるの?」


梓はまた大きなマスクをつけて、厚彦へそう聞いた。


厚彦は屋上へ視線を向けて頷いた。


「いる」


女性の顔を思い出すと、また胸が痛んだ。


カナさんはまだ苦しみ続けている。


そんなこと、女性には言えるわけがなかった。


「もう少し話が聞けないか、行ってみよう」


「そうだね」


グラウンドではまだ部活にいそしんでいる生徒たちが沢山いた。


そんな中、梓は立ち止まる。