楓莉(ふうり)、それ俺のなんだけど」




とある日曜日の夜のこと。

ソファに座ってテレビを見ていたわたしにそんな声がかけられた。





「あれ?ほんとだ、ごめん気づかなかった」

「大きさ的にわかるだろ…」

「この大きさ可愛いから自分のかと思った」

「はぁ、もー…まあいいけど」




麦茶を入れたグラスを片手に、呆れたようにため息をついた彼が流れるようにわたしの隣に座る。

ふわふわのソファが少しだけ沈んだ。




「あ、ねえ、私も麦茶ほしい」

「自分でやって」

「ケチ」

「座る前に言ってくれたらいれてあげたかもな」

「ケチ!」

「2回言うな」




ちぇっ、李々斗(りりと)のケチ。


――と、まあ声に出して言ったら怒られそうなので、それはこころの中で呟いて代わりに口をとがらせる。


そんなわたしを流し見した彼は、「何その顔」と言って麦茶を持っていたのとは反対の手でわたしの頬を挟むようにして潰した。