右手がジンワリ温かくて
意識がフワリと浮上した

真っ暗な病室に夜中であることを知る

カーテンを閉めない病室の窓に視線を移すと丸い月が見えた


泣き疲れて寝てしまったみたい

そして・・・僅かに視線を下げると


「・・・っ」


月明かりを背に浮かび上がった影に息を飲んだ

驚いて動こうとすると右手が感じた温かさの正体がそれを許さなかった


「蓮」


「・・・っ」


なんで・・・

真っ暗な病室のソファに大ちゃんが座っている


寝ぼけて頭の働かない私に


「何年振りかな」


大ちゃんはそう言って繋いだ手に力を込めた


「身体、平気か?」


「・・・うん。なんとか」


「そうか」


丸い月の所為なのか
寝起きの微睡みの中のお陰か


二週間前よりリラックスして話せることに驚く


「悪いことしたな」


「ううん、私が飛び出したから」


「いや・・・、そうか、そうだな
蓮が飛び出さなければ和哉は事故を起こさなかった
でも・・・それなら、あの子が轢かれてた
だから、良い方に考えたらこの程度で済んで良かったのさ
蓮には痛い勉強代だったけどな」


そう言って大ちゃんは笑った


「笑わなくても良いでしょ?」


クスクスと笑う大ちゃんは
あの頃を思い出させる笑顔で

二週間前に見た別人のような雰囲気は感じられない


「なぁ、蓮」


それどころか低い大人の声になった大ちゃんは
甘い声で名前を呼び捨てにするという胸にグッとくるような雰囲気を出してきた


「ん?」


恐る恐る視線を合わせると
僅かに口元を緩めたあとで爆弾を投下した




「俺は今でも変わらず蓮のことが大好きだ」