side 大和



東の街の中心駅から南北に伸びる大通りの南の外れに位置する此処は
俺たち[Night]と呼ばれる自警団的な活動の拠点

Nightはこの街の治安を護っている同志の集まり

大きな倉庫はスキップフロアになっていて
一階から仰ぎ見る全貌も、三階から見下ろす景色も俺の心を掴んで離さない


地下一階は駐車場
その殆どのスペースが自転車とバイクで埋められている

一階と二階はNightの面子が使うフロアで
簡単な仮眠室やキッチン、シャワー室まである


三階は、そのNightの面子を束ねる
幹部、準幹部が使うフロア

面積は一階の四分の一程で
エレベーターとトイレと幹部室だけしかない

それぞれのフロアへ上がるには
建物の両端に階段もある

大体エレベーターを使うが
俺は階段を上りながら面子を眺めるのが好きだったりする


上り切った三階は階下を見下ろすための真っ直ぐな通路

両サイドにある階段から繋がる
腰高の手摺りにもたれながら見下ろす景色は飽きない


「大和、始めるぞ」


「あぁ」


背後から声をかけてきた幼馴染の木村永遠《きむらとわ》に返事をして

もう一度階下を眺めると幹部室へと足を向けた


「大和、飽きねぇな」


僅かに広角を上げて俺を見たのは
もう一人の幼馴染、堂本亜樹《どうもとあき》


「だな」


揶揄われても止めるつもりもないから素直に認める


「始めるぞ」


永遠の声掛けで始まったのは
Nightの幹部会


特段問題が無い限り準幹部がそのまま幹部へと移行し受け継がれるのが慣わしで

この話し合いではその穴を埋める準幹部決めだ

代々Nightの幹部は高校三年生へ進級すると同時に受け継がれるのだが

俺たちの代は異例で

東の街を取り仕切る裏社会の主、白夜会
その一ノ組である堂本組組長 堂本皇樹を父に持つ亜樹が高校へ入学すると同時に
上二代がビビって辞退した所為だ