「「レンちゃーん」」


「いらっしゃい」


事故の翌日から夕方になるとアリサちゃんがお母さんとカナコちゃんとやって来る


黄色い帽子の二人は
学校の出来事を話してはコロコロとよく笑う

それに釣られて笑うだけで
幸せな気持ちになるから不思議


毎回お花を一輪お見舞いに持って来てくれて
それもなんだか嬉しい


岡部さんの厳しい指導もあって
コルセットを巻けば、ゆっくり壁伝いに歩けるようにもなったから

アリサちゃんのお母さんもホッとしているようだった


二、三日だと思っていた入院は
実は既に四日目に突入していて

事故の翌日の土曜日は、東美の理事長先生もお見舞いに来てくださった


橘院長の
「まともに歩けねぇのに退院させる病院がどこにある」


有無を言わせない診断で
“数日”の入院は“暫く”へと変わったらしい


幸い東美は六ヶ年のカリキュラムは五年生までで終わっていて

淑女の総仕上げが六年生の課題だから
少々休んでも問題ないと理事長先生は高らかに笑って帰って行った


それにしても・・・


「こんにちは〜」


「・・・」


あれからアリサちゃんが帰る頃に
毎日病室へやって来る飛鳥さんは

初日見た泣き顔を忘れるくらいのとびきりの笑顔で

“美味しかった”とお勧めのケーキを一つ持ってお見舞いに来てくれる


そして・・・


「和哉、車椅子」


「承知」


無理矢理、車椅子に乗せられて
病院の裏庭へと連れ出されるのが日課になった