・・・・・・夢を見た







『れんちゃん』


『だいちゃん』


『ぼくね、れんちゃんのことが
いちばんだいすき』


『れんだって、だいちゃんのことが
いちばんだいすきだよ』


『だったらね?おっきくなったら
ぼくのおよめさんになってくれる?』


『およめさん?』


『だいすきでいるとけっこんするんだって
ぼく、れんちゃんにおよめさんになってほしいの
ぼくとけっこんしてくれる?』


『うん、れんね、だいちゃんのおよめさんになる』


『『ぜったい』』


『『おやくそく』』


少し癖っ毛の髪はだいちゃんの雰囲気にぴったりで
向日葵みたいにキラキラした笑顔を向けられるだけで

明るい場所に連れ出してもらえる気がした


あの時の指切りは
未来へと続く二人の赤い糸




温かくて



楽しくて



笑顔が溢れていた・・・あの頃の夢





毎日毎日

一緒に居ることが当たり前で


それ以外のことなんてどうでも良かった


女の子の友達がいないことも
私には重要ではなくて


ずっと・・・ずっと当たり前が続くと



信じて疑わなかったあの頃


ただ・・・ただ
幸せだった





□□□





フワリと浮上した意識



温かい頃が




夢だったことに落胆して



もう戻れない現実を想うだけで



急に胸が苦しくて




その苦しさは



涙を連れてきた





「ハァ」



態とらしくため息を吐いたけれど
寝起きに泣いてると自覚したことで


未だに何ひとつ忘れていない自分を憂う


暫く見ることもなかったあの頃の夢を


こんなにリアルに見てしまったのは


あの街へ行く所為



心配しなくても


ニアミスでも会うことはないだろう



それに



今頃“彼”は綺麗な女性達に囲まれて


全く別の人生を歩んでいる・・・はず



だから



もう二度と交わることのない未来をお互いに生きている


目尻から流れた涙を指で拭うと
見えた袖口に息を飲んだ



「・・・っ」



勢いよく起き上がって自分の身体を見下ろす



「あーーーー」



・・・やってしまった


放課後そのまま帰って来て
ベッドに腰掛けた所までは覚えている


そのまま寝ちゃったんだ


シワのついた制服を慌てて脱いで
部屋着へと着替える


一晩吊り下げておけばシワも伸びるだろう


濃紺に白いセーラー襟の付いたワンピース型の制服は

ウエスト部分から下はプリーツスカートになっていて袖口と裾には白いライン が入っている


あの日、一目惚れした制服だけあって

手入れは万全にしてきたはずなのに


よりによってそのまま寝てしまうなんて・・・・・・


少しヨレたプリーツにブラシをかけて


ウッカリすると思い出しそうな暗い想いを頭を振って吹き飛ばした