04 雨が運んできた初恋。




それは突然だった。前触れなんてものはなかった。

梅雨でもないのに連日雨が続いた冬の日。気まぐれな雨は降ったかと思えば止んで、止んだかと思えば灰色のアスファルトを黒くに塗りつぶした。

何でも置いている雑貨コーナーには勿論傘も売っていて、この異常気象のせいで例年より傘はよく売れた。


私は断然傘はビニール傘派だ。

雨が止んでしまえばその存在さえ忘れてしまいがちで、何本失くしたかは分からない。きっとちょっとお高い傘を買ったとしても、どこかに置いてきてしまって後悔するのは目に見えているから298円のビニール傘で充分なのだ。

けれど駿くんは高くて丈夫そうな黒い傘をずっと大切に使っている。物も人も大切にするタイプなのだと思う。それでも私はちょっとお高い傘は未だに買う気にはならなかった。

その日も天気予報は外れた。雨になるなんて聞いていなかったのに、突然の豪雨によりショッピングに来たお客さんは傘売り場までやってきて、仕方が無しに傘を購入していくのだ。

よく売れたのはセール品だった。バックヤードから傘の在庫を持ってきて、すかすかになった間を埋めるように品出しをしていく。

そしてそれは突然だったのだ。