ピーーーーッ!

ピーーーーッ!!


ザァァァァァ────大きな海の波打ち際に立つ1人の少女。

目を閉じ、誰を思い浮かべているのだろう。



「用も無いのに呼ぶなと言ったはずだが」



コツンと頭を軽く小突かれて、振り返ったサヤはあの頃に比べ身長も伸びた。

それなのに紅覇は初めて会ったときと変わらない。


あのときは大きな大人に見えたけれど、12歳の少女からしたら今では少し年の離れた兄のようにも見える。



「町へ下りるぞ。お前の着物を買う」



低い位置で1つに纏めた髪は最初は小リスの尻尾のようだったが、今ではハクビシンといったところか。

いずれは狐、そして狼のようになるのではないか。


動く度にひょんひょんと揺れる1束を見つめ、紅覇は若干に目を伏せた。


ピーーーッ。

ピーーーー!!



「サヤ、うるさい」



ピーーーーッ!!!

足を止めない鬼妖怪に文句でもあるのか、その笛の音は段階をつけてだんだんと大きくなった。



「なんだ」


(お腹、空いた!!!)



新しい着物を伸長し、さっきまでウキウキと跳び跳ねていたというのに。

今度は腹が減ったと。