それから数日後、



九条さんのおうちに遊びに行くことになった。




コタロウくんに会えるなんて、もう嬉しくてたまらない!




「まあ、千里が女の子を連れてくるなんて、びっくり」




九条さんのお母さんは品のある素敵なひとで、



私を見て目を丸くして驚いていた。




「仕方ないだろ、


じいさんたちが色々面倒なことを仕組んでくるんだから」




「それにしたって」





くすくす笑っている九条さんのお母さんは、



明るくてなんだか楽しそうなひと。




「彩梅さん、高等科の3年生なんでしょう? 



田貫先生っていう、



ちょっとパンダに似た感じの英語の先生ってまだいる?」





「タヌキ先生! 今、副校長先生です!」





大きなお腹を突き出して歩くタヌキ先生は、



冗談ばかり言っている面白い先生ですごく人気がある。




「わー、なつかしいっ! 



昔はイケメンで人気があったのよねー」




「タヌキ先生がイケメン? 



いまは……信楽焼のタヌキって、あだ名が」




「ええっ! それはショックだわっ」




「あっ! でも、昔はモテたんだって、



タヌキ先生も言ってました。



いつもの冗談だと思ってたけど!」





嬉しいな、九条さんのお母さんも女学院生だったんだ!





九条さんのお母さんと女学院の話で盛り上がっていると、



ぐいっと腕を引っ張られて、おっとっと!





バランスを崩したところを、



九条さんにうしろから支えられた。




「彩梅はコタロウ見に来たんだろ。いくぞ、彩梅」




九条さんの腕のなか、



ドキドキしながら九条さんを見上げると、



九条さんはなんだかご機嫌ななめ。





「あら、もう少し彩梅ちゃんとお話したかったのに!」





「散歩、暗くなったら危ないだろ」





「いつも真っ暗ななか、散歩に行ってるじゃない」





「彩梅がいるんだから、だめだろ。彩梅、庭に行くぞ」




「あらあら、彩梅ちゃんのことが可愛くてたまらないのね」




くすくすと笑っている九条さんのお母さんにぺこりと頭をさげて、



ぐいぐいと九条さんに引っ張られるままお庭に向かった。