ピンポーン。

コンビニのお弁当を食べ終えて、お風呂から上がってすっきりしたところで、玄関チャイムの音が鳴り響いた。


……帰ってきたっ。


まだ水が滴る髪をそのままに、タオルを引っ掴む。
適当に体を拭き、脱衣所に転がっていたTシャツを頭から被ると、わたしは廊下を駆けた。


鍵を開けようとしたところで、はたと立ち止まる。

何やらドアの向こうが騒がしい。


「あの、樫葉(かしば)くん、一人暮らしでしょ? チャイムじゃなくて、鍵を——」


若い女の人の声。


「んや、だいじょーぶなんで……」


続いて、聞き慣れた声。

けれど呂律の回っていない、普段よりもだらしないそれに、わたしは瞬時に状況を把握した。


「なにが大丈夫なの、もー。ほら、鞄貸して」

「んー」


聞こえてくる会話に苛立って、ためらうことなくドアを開ける。