最後の楽しみに残しておいたミートボールを口に運んで、わたしはお弁当箱の蓋を閉めた。


——まさか保健室のベッドの上でご飯を食べる日がくるなんて。


五十嵐先生の優しさに感謝しながら、心の中で苦笑した。

目立った怪我はおでこだけだったし、あれから意識もはっきりしていて、どこも異常がないから、午後の競技にも出られるかと思っていたのだけど……。

お昼になって、食事をとるためにベッドから下りようとしたわたしは、床に足をついた瞬間——、あまりの痛みに、再びベッドへ逆戻りしたのだった。


「……足、大丈夫?」


空っぽのお弁当箱を片付けながら、美月が心配そうにわたしの足元を見た。


「うん。たぶん、ただの捻挫」


いつの間にか捻っていたらしく、徐々に腫れてきた足首。


……こんなんじゃ、鈍臭いと言われても仕方ないかもしれない。


迎えを呼んで病院に行くことを勧められたけれど、今は家に誰もいないし、せっかくの体育祭だから、と五十嵐先生の提案を断ってしまった。

とりあえず湿布を貼って様子をみることにしたわたしは、保健室のベッドという特等席から、午後の競技を見学することにした。