爽やかな草原の香りがする。

水の底からゆっくりとのぼる泡のように意識が浮上した。
まぶたの向こうがうっすら明るいことがわかったけど、まだ眠たくて目を開けることができない。

でもいつもとはなんだかベッドの感じがちがう気がする。
ラベンダーのファブリックミストとは別の香りがするし、ぽかぽかあったかい。
それに少し体が重くて動きにくいような……。


「……んん?」


おかしいぞ、となんとかまぶたを持ち上げると、そこには完璧なまでに美しい、王子様の寝顔がどアップであった。

声にならない悲鳴を上げて離れようとしたけど、がっちり抱きこまれていて動けない。
体が重く感じたのはこのせいだったんだ。

どうしてクラスメイトの飛鳥井狼くんが私のベッドにいるの!?