【side狼】


(あー……家に帰りたい)


廊下を歩いていると、名前も知らない女の子たちに囲まれた。
前をふさがれると俺も足を止めないわけにはいかないので、なぜか立ち止まり彼女たちの話を聞くはめになっている。

いや、ほとんど聞いてはいないんだけど。
頭の中は『早く帰りたい』『今日の晩ごはんは何だろう』『家で仁葵ちゃんを可愛がりたい』……とまあ、仁葵ちゃんとの同棲生活のことでいっぱいだし。

俺は返事も相槌もしないのに、やけに楽しそうにはしゃいで喋る女の子たち。
その向こうに、華奢でしなやかな猫っぽいシルエットの女の子を見つけて胸が高まった。


愛しの仁葵ちゃんだ。
後ろ姿だってすぐにわかる。
俺が彼女を見まちがえるはずがない。