――一年後。

私は自分の部屋で、もう長い時間腕を組んで悩んでいた。


「服はけっこう減らしたけど、バッグと靴はどうしよう。勉強道具と机はもちろん先に運ぶでしょ。このソファーも座り心地が気に入ってるから持っていきたいんだよね。でも部屋が狭くなるかなあ」


高校卒業と同時に、婚約者の家へと引っ越すことが決まっている私は、その準備で頭がいっぱいだった。
おかげで受験勉強にも身が入らなくて困ってる。

私の希望している大学の看護学部はそんなに倍率が高いわけじゃないけど、判定は毎回ギリギリだし、気合を入れなきゃいけないのに。


「仁葵ちゃん。とりあえず必要なものだけ運んで、迷っているものはあとからにしてもいいんじゃありません?」