「殿下? どちらにいらっしゃいます?」
「まあいいだろう、今日は休日だぞ。そっとしておいてやれ」
「ですが、王妃様がお呼びで――新しい服を仕立てる、と」

 やれやれ、と目の前にいるエドアルトが首を振る。

「行かなくていいんですか?」
「今日は、休日だからいいんだ」

 アイリーシャは、目の前にいるエドアルトの顔を見つめる。
 今、二人の手はぎゅっと握りあわされていた。アイリーシャの膝の上にいるルルはうつらうつらとしていて、二人の会話にはまったく注意を払っていない。
 こうして手を握り合わせていれば、二人とも誰にも存在を察知されないのだから、ある意味便利な能力だ。

「でも、これでよかったんでしょうか……」

 アイリーシャがぽつりと言う。
 結局、魔神の復活については、公にしないことで決着がついた。公にしたところで、人々が不安になるだけだろうからという理由だ。

「呪いの元凶については、公表しただろう。ミカルの失踪についてもそれで説明がつく」