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 次の日の夕方。

 ダンスレッスンのために
 俺は春とスタジオに来た。



「みゅうみゅうね
 モンブラン作ってきてくれたんだよ」



 朝から聞かされ続けている
 クリスマスのラブラブ話。



 興味ねぇって意思を顔に貼り付け


「良かったな」


 そっけない返事だけ、なんとか返す。



 
「マー君も思うでしょ?」



「は?」



「みゅうみゅう、可愛すぎだって」



 思わねえよと、心の中でつぶやくも
 口は閉じたまま。



 だって、春の奴。

 俺がウサギの悪口を言うと
 すっげー不機嫌になるから。



 唇を突き出して。ムッとした顔をして。

 ウサギの可愛さを
 ひたすら俺に説明してくるから。



 別にいいだろ?

 お前の彼女の可愛さなんか
 俺がわかってやらなくても。



 いつの間にかスタジオに来ていた綾星と雅。


 クリスマスの胸キュン話大会に
 加わってきて。


 俺は自分の存在を消しながら

 ルンルン声が飛び跳ねる場所から
 逃げ出した。