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「そろそろ冷静になりましたかね」
シャコシャコ。
洗面台の前。
並んで歯みがきをしてたら、利人が鏡越しに目を合わせてきた。
あれからあたしに大量の水を飲ませて、さらに冷水で顔を洗わせたこの人は、キスしたっていうのに、顔色一つ変わってない。
冷静になんてなるわけないじゃん。
だってキスだよ。
好きな人とキスしたんだよ。
酔いは醒めたとしても、心は立派に燃え盛ってるよ。
利人にとっては、黙らせるための手段でしかなかったみたいだけど……。
「なゆ、顔赤いけど。まだ酔ってんの?」
「ち……違う」
ウイスキーバンバンの効果はもう切れた。
おかげで正常な思考回路が戻ってきたわけだけど、そのせいで……さっきキスをねだったことが、時間差で猛烈に恥ずかしくなってきているのです。