いつもは静かな授業の時間。けれど、担任であるこの人の数学の時だけはいつもうるさい。

「せんせー、どうしたら彼女ができますか?」

そして、こんなバカな質問が飛び交うことも毎回の光景だ。

「大丈夫。お前の魅力をわかってくれる人が世界にはいるよ」

「えっ、俺、日本じゃダメなの!?」

どっと笑い始めるクラスメイトたちを叱ることなく、先生は黒板に数式を書いている。

うちの担任はなんていうか、変わってる。

生徒たちとは友達みたいだし、ラインも交換してるし、服装はもっぱら浪人生みたいな、だらっとしたものを着ている。

見た目は普通にイケメン。背も高いし、安定した職にもついてるし、お母さんから数字に強い男を選べって言われてるから数学教師なのもいい。

でも、先生はこう見えて30歳を越えている。

従兄弟(いとこ)に同い年くらいの人がいるけれど、話は合わないし、あいみょん知らない時点で終わってるし、なにより17歳の私からしたら普通におじさんだなって思っちゃう。

けれど、先生はおじさんというより、お兄さんみたいだ。