目の前に広がるのは一面の真っ青な海と空だけ。

 オーシャンビューを売りにした教会。

 目の前には純白のウエディングドレスに身を包んだ信じられないくらい綺麗なハルカ。

 僕はオマケのようなタキシード。

 神父は博人。

 参列者は綾だけ。

 銀髪の神父が厳かに口を開く。

「汝、滝沢奏多は、この女、滝沢春歌を妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

「はい、誓います」

「汝、滝沢春歌は、この男滝沢奏多を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

「はい、誓います」

「お二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれた このお二人を神が慈しみ深く守り、助けてくださるよう祈りましょう」

 さらに銀髪の神父は続ける。

「 宇宙万物の造り主である父よ、あなたはご自分にかたどって人を造り、夫婦の愛を祝福してくださいました。今日結婚の誓いをかわした二人の上に、満ちあふれる祝福を注いでください。二人が愛に生き、健全な家庭を造りますように。 喜びにつけ悲しみにつけ信頼と感謝を忘れず、あなたに支えられて仕事に励み、困難にあっては慰めを見いだすことができますように。また多くの友に恵まれ、結婚がもたらす恵みによって成長し、実り豊かな生活を送ることができますように」

 博人がつらつらと読み上げる口上に僕もハルカも、綾も唖然とした。

「それでは誓いの口付けを」

「あ、はい」

「いや、返事はいらねえから」

 僕は春歌のヴェールをゆっくりとあげ、その柔らかな唇にそっと触れた。

 短い口付けが終わった時、春歌の瞳からは涙が流れていた。

「春歌、絶対幸せにするから」

「ううん、もう充分に幸せだよ、奏多」

「ちょっと春歌!化粧落ちるわよ!写真撮らないと!」

 慌てた綾に言われて、式場のスタッフに頼んで4人で写真を撮った。

 法的には認められない結婚式を終えて、着替える為に教会から出ようと扉まで行くと、スタッフの人が開けてくれた。

「「えっ・・」」

 そこには2人の人が立っていた。

 見間違いでも、幻でもなく

「「父さん、母さん・・」」

 僕達の両親が。