その日は授業に出る気になれず、空き教室を出て人気のない場所で時間を潰した。


銀星に言われた通り、トイレに行って鏡で自分の姿を確認すると、首筋と鎖骨付近に赤い痕がついていて、これを銀星がつけたのだと思うと、本当に自分が彼の所有物になったように感じた。


そのままにしておくわけにもいかず、絆創膏を貼って誤魔化したけど、かえって目立っているような気がして、家に帰るまで挙動不審になってしまった。


*****


翌日、私が登校すると木下の姿はなく、クラスメイト達の噂話で木下が入院したことを知った。
皆、私に近付くのを恐れるように、私から距離を置いていた。


昼休み、教室に友幸がやって来て、「銀星が呼んでる」と言って私を教室から連れ出した。
銀星の言うことに大人しく従うのは癪だったが、この間みたいに周りの人を傷つけられたらたまったものではない。
私は銀星を恐れている自分に腹が立ったが、大人しく友幸の後をついて行った。


空き教室に着くと、友幸は心配そうに私を見た。


「……大丈夫か?」


そんなふうに心配するくらいなら、銀星を止めて欲しい。
そう思ったけど、友幸は銀星の友人だし、私が何を言ったところで無駄だとわかっているから、口には出さなかった。
もうこれ以上余計な面倒事は増やしたくない。


友幸は何も答えない私を見て肩を竦め、空き教室のドアを開けた。