その日から、私は空き教室へ行かなくなった。


本当は銀星のことが好きだと伝えたい。でも、私は自分の目的のために銀星を利用しようとした。
その事実がある限り、銀星に何を言ってもわかってもらえない気がした。


銀星に会えない毎日は退屈で、全てが色褪せて見えた。
もう食べてくれる人はいないのに、お弁当をもう1人分作るのをやめられない。


銀星と過ごした時間も、銀星と触れ合ったことも、遠い昔の思い出のように感じる。


銀星は、今どうしているだろうか。


私は雨が降り続く窓の外を見つめながら、溜息をついた。


*****


昼休み、屋上に繋がる階段の踊り場で、私は一人お弁当を食べていた。


「……これ、どうしよう」


私がふたり分のお弁当を見つめて困っていると、「姫様!」という元気な声とともに賢翔と友幸が現れた。


「探しましたよ。最近ずっとあの部屋に来ないから、心配してました」


「いないと思ったらこんなとこにいたのか。……ん?弁当……銀星の分か?」


私は二人を呆然と見つめ、「銀星は……」と呟いた。