初夏。


桜の花も散り、学校に続く並木道は緑に彩られ、キラキラと木漏れ日が差している。
いつもよりも早く家を出た私は、まだ生徒の少ない歩道を大股で歩き、やがて学校に辿り着く。


──私立大神高校(しりつおおかみこうこう)


私の通うその学校は去年まで男子校で、女子生徒は現在私ひとりだ。
学校に女子ひとりだなんて親や友達が心配するだろう、と入学式の日に担任教師に言われたけど、あいにくうちの親は子供に興味のない放任主義で、友達は中学の時にみんな喧嘩別れしたから、心配してくれる人は存在しない。
だけど、私にはそのほうが好都合だった。


校門をくぐって中庭を進み、昇降口へと向かう私の耳に、誰かの悲鳴が聞こえてくる。


思わず足を止め、辺りを見回す。


悲鳴が聞こえた方向にためらうことなく歩き出し、体育館裏の人気のない場所に数人の男子生徒がいることに気付く。