「殴られたって………誰にですか?」

「………わからない。後ろからだったし、かおは見てないんだ………っ、いて………」

「………大丈夫ですか?痛みますよね?」

「………くっそ………証拠を、奪われた………」

「証拠?なんの証拠ですか?」

「………犯人だよ………犯人の、証拠………」

「………やっぱり」

「やっぱりって?」

「あの後、その証拠がなくなっていることに、わたしも気づいたの………」

「それ、本当ですか?」

「………はい。確かにあったものが、なかったんです。そこに」

「じゃあ、犯人がやっぱり………持ち去った?」

「それしか考えられません」

「………犯人って、誰なの?」

「ーーーーー」



平林繭香が、中原葵に耳打ちする。

そしてその顔は、驚きを隠せない顔をしていた。




「………それ、本当ですか?」

「間違いないと思います」

「………そんな、どうして………」




中原葵の顔が、沈んでいるのがわかった。