「……全員死んだなんて、おかしいです」

「どういうことだ?」

「……わたしの父は、警察官なんです。当時、この事件の捜査にあたっていました」

「えっ!?」

「おい。本当かそれ?」

「間違いありません。父が言っていました。この集団自殺で、唯一ひとりだけ生き残った人がいると……」

「まじかよ……」


大河内すみれの言葉に、みんな絶句した。

言葉が出なくなり、沈黙が続いた。


「なぁ、生き残った人って、その後どうなったんだ?」

そう問いかけたのは、大谷瞬だ。



「……父が言うには、その後はもう10年くらいずっと植物状態だそうです。脳に大きくダメージを受けて麻痺が残ったため、目が覚めたとしても、体は麻痺がしているので、手足だけでなく、体全体的が動かないそうです」

「……その人の、名前は分かるか?」

「たしか……野上早智子(のがみさちこ)って人だったと思います」



大河内すみれがその言葉を、発した瞬間に……。

とある一人の表情が変わったのを、大河内すみれは、見逃さなかった。