「あーー美味しかったですね」

笑顔で隣を歩いているのは後輩の山口くん。

ラーメンを食べ終えた私たちは、一戸億越えと言われているレジデンスの前を歩いていた。レジデンスの前は緑あふれる公園になっている。

「本当に美味しかったわ。私、屋台のラーメンなんて初めて食べた」

「俺も!!俺もです」

興奮気味に涼が拳を握り締めていたとき、涼の足下にバスケットボールがコロコロと転がってきた。

「……ん?」

「すいません!ボール投げてください!」

こんな時間にバスケットしてるの?

近くにある大学の学生かしら?

五人の学生らしき男の子たちが汗だくでボールを待っていた。涼はボールを手に取ると、トントンとボールをつき、綺麗なフォームでボールを放った。

ボールはきれいに弧を描きバスケットゴールへと吸い込まれていく。

すごい……

きれい……

玲奈は「すごい、すごい」と手をたたき、はしゃいでしまった。涼は、はしゃぐ玲奈から目を逸らすと照れたように頰をかいた。

男子学生からもどよめきが聞こえる。

「すげーー」

「あの距離から入るのかよ」

そこへボールを持った学生が駆け寄ってきた。

「こんな所からゴールってすごいっすね。良かったらやっていきません?」

涼は困ったような顔をしているが、目はバスケットゴールを見ている。

やりたいのかな?

「山口くん、やりたいんじゃない?ジャケット持ってるから、いってらっしゃい」

玲奈は涼からジャケットを受け取り近くにあったベンチに腰を下ろした。

季節はもうすぐ夏だが今は夜のためか、風がとても涼しく過ごしやすい。

気持ちいいなーー。

ボーッと見つめる視線の先には、バスケットゴールを手にピョンピョンと走り回る学生たち。

若いっていいわねーー。

仕事終わりで疲れているはずの山口くんも、夢中になってボールを追いかけている。

みんなキラキラしてる。いいなー。なんて思っていると……。

「一条さんも一緒にやりましょうよ」

ボーッとしていた玲奈は、涼の声にはっとした。

「えっ……いいわよ。ちっ……ちょっと待って!!」

涼は玲奈の手をグイッと引っ張るとコートの中へ入っていった。

「山口くん、私バスケットはあんまりやったことがないのよ」

「大丈夫、大丈夫」

涼は玲奈にボールを手渡すと、玲奈を後ろから包み込むように二人でボールを構えた。

「しっかりゴールを見てください。はい、投げてみて」

玲奈は力一杯ボールを放った。

するとボールは弧を描き、ガコンっとゴールに吸い込まれた。

「やった!!山口くん、入った入った」

はしゃぐ玲奈を見つめ、涼はまぶしそうに目を細めた。そのまま二人はバスケットに夢中になっていた。



「はーー。疲れたーー。若者には、かなわないわーー」

ベンチに座り込む玲奈を心配そうに見つめる涼。

「大丈夫ですか?何か飲むもの買ってきましょうか?」


その時「わーー」っと、水飲み場の方から声が上がった。休憩していた学生達が、水を飲み終え、今度は水の掛け合いを始めていた。