「いってきます」

哲也に声を掛け、やっぱりいつもより早く家を出る。

「今日はどこのモーニングにしようかな?」

お腹も空いてないが、食べなくなることが続いてしまうので、強制的に食事をする。

結局、事務所近くのカフェでモーニングを食べることにした。

ゆっくりと時間をかけ朝食を食べると、瑞穂が入ってくるのが見えた。

「瑞穂」

声を掛けると、気づいた瑞穂が手をあげて私が座っている席に来た。

「おはよう、モーニング?」

アイスコーヒーを手に持って、座った。

「うん、早く寝すぎて、早く目が覚めちゃったの。午後に眠くなりそうだけど」

「そっか」

そんなことを言っても、私がモーニングを食べる時は、決まって哲也の夢を見た時だと瑞穂は知っている。何も言わないのは彼女の優しさだ。

「昨日はお疲れだったわね」

「疲れたなんてもんじゃないわよ」

「でも……」

「言いたいことは分かる。恥ずかしいから言わないで」

にやけた瑞穂の顔を見て、すぐに阻止した。

「絶対に聞き出すから、覚えておいて。みんな一ノ瀬さんの話題で持ちきりだったんだから」

「事務所のスタッフには言ってないわよね?」

「当たり前でしょう? モデルとマネージャーには口止めというか、事務所の社員と専属だから黙っていることは当たり前だし。一ノ瀬さんが交渉して、モデルに唐沢さんから仕事をもらったし。損はないはずだからね」

「誰にも知られたくないのよ」

「分かってる、分かってる。で、どうだった? 一ノ瀬さん、すっごくいい男だったでしょう?」

「もう! 瑞穂!」

「いいじゃない、減るもんじゃないんだから」

私が瑞穂の立場だったら、同じように聞いただろう。

だけど、自分の口からどんなふうに撮影したかなんて言えない。

いまでも、思い出すだけで顔から火が出そうになる。