「あれ? 会長と蔦子姉ちゃん、まだ来てないの?」

先日の、蔦子先輩腐女子暴露事件以来、緒方くんは生徒会室では蔦子先輩を『蔦子姉ちゃん』と呼んでいます。

あ、私は『けいちゃん』とは呼びませんよ。

「蔦子先輩が、お見合いが嫌だから会長に彼氏やれと連行していきました」

「あー……そろそろ来たか」

緒方くんは特に動揺した様子もなく、自分の席につきます。

ちなみに、私はまだ正式な生徒会役員ではないので自分の机や椅子はありません。

いつも会長のお使い的なことがお仕事で、席についてやる仕事もないので問題はないです。

「知ってるんですか?」

「料亭『あいりん』の若女将だからね。一人娘だから、婿養子とって跡継がなくちゃいけないし」

ほお。名家はそういうところ大変なんですねえ。

「旦那や女将たちが、蔦子姉ちゃんに早く結婚相手を、ってのは知ってた」

「緒方くんは、それでいいでんすか?」

「いいもなんも哀淋はうちのご主人様だよ。会長なら彼氏として問題ないだろうし、高校生の付き合いなら別れがあってもおかしくない」

「別れちゃっていいんですか?」