「お嬢様、そろそろお目覚めくださいませ。朝でございますよ」


「う……ん」


重いまぶたをようやく開ける。


シャッとカーテンが引かれて眩しい光が部屋中にさしこんだ。


白を基調とした部屋。ヨーロッパ製のこだわりの家具が並んでいる。


棚の上にはお気に入りの可愛い小物やぬいぐるみがところ狭しと置かれていて。


ここは私のお部屋。


ああ、夢の世界からようやく覚めたんだなってわかる。


「ばあや?」


「はいはい、ばあやでございますよ。今日はまた随分とお寝坊のお嬢様でございますね」


ばあやの優しい笑顔を見たらホッとした。


ばあやは私の母に仕えてくれていたんだけど、母亡き後もうちを辞めることなく今では私の面倒を見てくれている。


普段は優しいけど、怒るとちょっと怖い私の教育係でもある。


たぶん今年で60歳くらいのはずだけど、まだまだ若々しくて元気だ。


良かった、こっちが現実。


なんだか昨夜は不思議な夢を見ていたような気がするの。